猫の伝染性腹膜炎(FIP)

 

今回は恐ろしい猫特有の病気、「伝染性腹膜炎(FIP)」のお話です。
この病気はウイルスによって起こります。

実はこの病気は昔存在しなかった!と言われています。
初めて紹介されたのが1960年ごろのアメリカで、
その前までは報告が無かったのです。

 

 まずウイルスについて知っておきましょう


ウイルスを知る上で重要なものに「突然変異」というものがあります。
何、それ?って感じでしょう。
では、まずはインフルエンザのお話をしましょう。

人間のインフルエンザ・・・これは毎年何型が流行る、
どのワクチンを打つ、と言われていますよね。
このインフルエンザ、実は一番「突然変異」を起こしやすいウイルスなのです。

つまり、環境によってウイルスの一部分を変えてしまうのです。
それによって前まで効いていたワクチンが効かなくなるので、
今年はインフルエンザがどんな形に変形してやってくるか、
分からないのです。

インフルエンザのワクチンはすべて「予測」です。
このタイプが流行りそうだ・・・ってだけなんですね。

「突然変異」はウイルスの形や特徴を変えることになります。
つまり、前よりも強く病気を起こすウイルスになることもあるんですねぇ。

同じインフルエンザでも、出る症状が違ったり、
亡くなる方が出たりするのはこういった訳なのです。

 

 

 FIPはどんなウイルスで起こるの?


さて、話を戻しましょう。
伝染性腹膜炎の原因は「コロナウイルス」というウイルスです。
このウイルスは、普段はそんなに病原性が強くないウイルスです。

ところが、猫の体にこのウイルスが入ると、ごくたまに
とても危ないウイルスに「突然変異」してしまうことがあるのです。

それによって起こるのが伝染性腹膜炎。
体力の低下や免疫力の低下が、「突然変異」の原因とも言われています。
とにかく、強いウイルスに「突然変異」してしまうと、だいぶ厳しいものになります。

 

 FIPの症状


ウェットタイプとドライタイプと呼ばれるもので分けられます。
一般的にはウェットタイプが多いです。

ウェットタイプは、全身の血管がウイルスにやられてしまい、
水分が漏れ出してしまうものです。(ウェットはこの漏れ出しのことを言っています。)

水分が漏れるとお腹の中や胸の中に水が溜まってしまい、
お腹がブヨブヨしたり、呼吸が困難になります。

ドライタイプでは、このような水分の漏れ出しはあまり起こらず、
腎臓や肝臓に硬いしこりが出来て、正常に働けなくしてしまいます。
また、脳やすい臓、神経、腸など、様々な部分に症状が出ることがあります。

ただし、「突然変異」の仕方によって症状の強さはぜんぜん違います。
多くの猫は感染しても無症状、または軽い症状で終わるのです。
症状が分かりやすいくらい見られた時は、かなり危険と考えていいでしょう。

 

 FIPの診断


症状とFIPテスト、お腹や胸に溜まった水の検査などによって疑っていきます。
FIPテストは、このウイルスを体がやっつけようとした時に出現する、
「抗体」が存在するのかどうかを見るテストです。

やっつけようとするときに出現するのですから、存在すれば
やっつけている最中かやっつけた後か・・とにかく感染が疑われますよね。

ただし、「突然変異」したウイルスがあまり強くないものだった場合にも、
このFIPテストで高い値を出すことがありますので、
「FIPテストの数値が高い」=「危険な伝染性腹膜炎」というのは短絡的すぎます。

逆にFIPテストで低い値だからといって「安全」なわけでもありません。
体が弱りきった状態で、ウイルスをやっつけようともしないことがあるからです。

溜まった水や、症状の出ている臓器などからウイルスを見つけることが
唯一の確定診断、FIPテストはあくまで補助的なものとなります。

 

 治療


治療法は存在しません。
対症療法で猫を元から元気にしてやることです。

伝染性腹膜炎は発症してしまうと数日から数週間で死んでしまうことが多いです。
非常に危険な病気ですので、頭の中にこの病気のことを入れておいてくださいね。

 

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