「今まで言えなかったんだけど、あなた・・漁港で魚が腐ったような臭いするわよ?」
「お、お前こそ・・いつも閉店間際の肉屋みたいな臭いがしてるぞ・・」
突然訪れた夫婦の危機。
ついに二人は部屋に充満する異臭にメスを入れたのです。
果たして旦那が肉屋なのか、妻が漁港なのか・・
そんな二人を見つめ、心配そうにハッハッとパンティングする愛犬の姿・・
愛犬の姿・・
ハッハッと・・ハッハッと・・
「うわっ!臭っ!お前か!!」
臭いのは愛犬の愛らしいお口元だったのです。
新たな問題に頭を抱える二人・・
しかし、まだそれはほんの序章に過ぎなかったのです。
「ニャ~♪ニャ~ニャニャ~♪」
今度は心配して愛猫がやってきました。
ニャ~ニャ~・・ニャ~ニャ~・・
「うわっ!うおぇぉぇ!こ、こいつ凄い臭いニャ!!」
「あなた!語尾がおかしくなってるワン!!」
もはや家庭は崩壊寸前です。
ああ・・もっと前から口のケアをしておけば・・
ということで、今回は犬や猫の歯石を出来るだけつけずに
全身麻酔を出来る限り防ぐ方法についてのお話です^^;
犬や猫と人との口は違う?
実は3歳以上の犬や猫の約8割に歯周病が見られます。
ものすごく多い!!と思われるかも知れませんが、
人間だって13歳までの虫歯発生率は90%以上です(苦笑)
55~64歳の歯周病有病率は82.5%にもなります。
明らかに犬や猫と比較して歯磨きしてるでしょうにねぇ。
さて、それではまず犬や猫の口と人間の口の大きな違いについて知っておきましょう~。
【犬や猫と人どこが違う? その1】
人間の口の中は弱酸性ですので、酸が大好きな菌が繁殖しやすいです。
犬や猫の口の中は弱アルカリ性ですので、酸が大好きな菌は繁殖出来ません。
【犬や猫と人どこが違う? その2】
人では唾液に細菌の栄養になる糖分を作り出すアミラーゼが含まれています。
犬や猫の唾液にはアミラーゼが含まれていません。
菌が育ちにくい環境だけでなく、栄養も無いんじゃ増えようがありませんね~。
【犬や猫と人どこが違う? その3】
人の奥歯は平らな面にくぼみがある構造をしています。
犬や猫の歯は肉を引きちぎるため尖った歯をしています。
くぼみに食べカスがたまらなければ、虫歯にもなりにくいですよね~。
ということで、犬や猫では通常虫歯が起こりません。
でも、アルカリ性はアルカリ性で問題があるのです。
そう、歯石が作られやすい^^;
実に人間の5倍ものスピードで歯石が作られてしまいます。
歯石が出来て、炎症が起こって、歯周病になるんですね。
これが無ければ、人間の方でも「口腔内をアルカリ性に保ちます!」なんていう
サプリメントやスプレーが発売されているんでしょうね。
つまり、犬や猫の口腔対策は「歯石を付けないこと」、これに尽きます。
歯石の対策! 歯磨き
人間と同じで「歯磨き」をすると歯石がくっつくのを遅く出来ます。
一番歯石対策に効果があるのはこの方法でしょうね~。
「遅く・・?まったく付けたくないんだけど!」
いやあ、全く付かないようには残念ですが出来ません^^;
歯周ポケットまではどうやっても完璧にはお掃除出来ないと思います。
人間の場合だって、しっかりと歯磨きをしていても久しぶりに歯医者さんに行けば
歯石取りを勧められる事なんてザラですよね~。
まずは歯ブラシを受け入れてくれるようにしていかなければなりません。
受け入れていない段階で、無理に歯磨きしちゃダメですよ^^;
ネット上では「口の固定器具を使って歯ブラシで・・」なんて紹介をしている方も居ますが、
口の固定をしないと歯ブラシ出来ないような子に無理やりブラッシングをしたら
逆に歯茎を傷つけて歯周病になっちゃうと思いますよ(苦笑)
それにトラウマになって問題行動ばっかり増えてしまうと思います。
徐々に歯ブラシに慣らしていって、それで出来そうなのかどうかを判断する必要がありますね。
歯ブラシが難しそうでしたら、他の方法で行くしかありません。
それでは他の方法を見ていきましょう~。
歯石対策! おやつやフード
実は歯石除去を目的とした処方食なんかもあります^^
処方食以外の「歯周炎に!」といったフードもたくさん出ていますが、
本当に効果があるのかバックデータが無いものばっかりですので
ビーグル獣医としては特にオススメする予定はありません(苦笑)
その点、処方食はバックデータありきの物ですから、例えばt/dなんかですと
特殊な粒が配合されていまして、歯垢や歯肉を付きにくくしてくれることが
科学的に証明されています。
まあ、処方食ですので他のフードよりも高いですけどね(苦笑)
他の処方食同様、「これ完璧!おすすめ!」というような物でもありませんが(苦笑)、
他の変な歯石除去フードをあげるくらいなら、こちらの方がずっとマシです。
また、もしウェットフード中心であげているのであればドライフードに
切り替えるだけでも歯石対策としては効果がありますよ^^
おやつの方ですが、こちらもフード同様、バックデータに乏しいものが多いです^^;
まあ、硬めで歯をこすってくれそうなおやつであれば、効果はそれなりにあると思いますけどね(笑)
あ、でも硬すぎるのはNGですよ~。
例えば牛のヒヅメですとか大腿骨などは、あまりにも硬すぎますので
よく歯が割れて慌てた飼い主さんが病院にやってきます。
ちょっと牛のヒヅメなんかは酸化具合ですとか、いつ作られたものなのかとか
他の不安もありますけどね(苦笑)
なんであんなにヨダレまみれでもカビないんでしょうねぇ・・
もし、イマイチどんなおやつをあげれば良いか分からないようであれば、
これについても動物病院で扱っているようなおやつにしておけば、最低限の対策にはなると思います。(←これが最高!とオススメしている物ではありませんのであくまで最低限ということで^^)
例えばビルバックベジタルチュウとか↓
グリニーズとか↓
この辺なら無難でしょうね。
ただし、丸呑みしがちな子ですとグリニーズはちょっと危ないこともあるので
性格によって使い分けた方が良いと思います。
歯石対策! おもちゃ
ただし、縄状のものは壊れ始めたら早めに新しいものに変えてくださいね^^
ビーグル獣医の感想では縄状のおもちゃが一番オススメなのですが、ほつれてきて
糸が出ているような縄状のおもちゃは危ないので一番オススメできない物質へと変化します(汗)
他のおもちゃでも同じですが、間違えて飲み込んでしまう可能性のあるおもちゃはNGです。
全身麻酔を減らすために取った対策で全身麻酔の大がかりな手術なんて
一番悲しい結果ですからねぇ。ご注意ください~。
ちょっと変わった歯石対策
一番最初に言ったことなので、もう忘れちゃった方もいらっしゃるかも知れませんが(笑)
そもそも歯石が出来るのはアルカリ性のお口による影響が大きいです。
ということは、口の中を酸性にすれば良いんじゃね?
そんな商品があります。
似たような商品も市販されていますが、使った感じですとこれが一番良さそうです。
成分としてはアルコールとハーブだけの単純な物ですが、
例えば歯石つきまくりの犬や猫に試してみると10数日くらいで
歯石が手でもポロポロと取れてきます。
(その犬や猫によって効果は変わりますけどね^^;)
アルコールですので、人間と同じでアレルギーが出るような子には注意ですよね。
軽く皮膚にかけてみて、反応を見てから使うのも一つの方法かも知れません。
ただ、ビーグル獣医おすすめの使い方としては、予防的な使い方の方が良いと思います。
ポロポロとれても、歯周ポケットには残ると思いますしね。
(取れた後も臭いはそこまで軽減されないことからも予測できます)
つまり、歯石まみれの子に使ってポロポロ取るよりも、一度思い切って歯石除去を
麻酔下でやってから、次の歯石除去までの日数を延ばすために使用するってことですね。
まとめ
歯石対策としては「歯磨き」、それが無理なら「フードやおやつ、おもちゃ」、
更に変化球で「歯石対策スプレー」というお話をしてみました^^
ちなみに「全身麻酔無しで歯石とってもらえばいいじゃん」についてですが、
ビーグル獣医は麻酔無しで良い治療が出来る気がしません(苦笑)
だいぶ長文になってしまいましたので、これについては別にお話しましょう。
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