これは私の友人獣医が、実際に体験したあるビーグル犬のお話になります。
本当に素晴らしい犬です。
一体彼が助けた動物はどれだけになるでしょうか。
基本、吠えます(笑)
ご飯の時間になると、「ワホホホホーン!!」とひたすら吠え、
散歩の時間になると「ワホホホホーーーーン!」と強く吠える彼。
はっきり言ってうるさいです^^;
彼が病院に来たのは今から5年前。
既に老犬だった彼は、病院の前につながれていました。
そう、捨てられたのです。
吠えて周りから苦情が来たのか、それとも、急な転勤で
飼えなくなってしまったのか・・・
どちらにしても飼い主として最低です。
本当は、こういった犬はそのまま保健所行きになります。
ただ、その時はたまたま入院舎がガラガラだった事、繁忙期では無かった事などもあり、
スタッフで話し合った末、里親探しを頑張ろう!ということに決まりました。
保健所に行ってしまえば、老犬である彼は真っ先に殺処分でしょう。
もっと可能性のある子に力を入れるでしょうから・・
彼はギリギリのところで命を取り留めたのです。
もちろん、動物病院でも里親が見つからないのは同じです。
時間も経ち、気づけば彼は病院の犬となっていたのです。
そんな彼が・・・
そんな彼ですが、実に素晴らしい功績を挙げます。
彼には不思議な力がありました。
それは、「他の入院動物に異常があると吠える」と言う力。
どうしてそんな事が出来るのか、理屈ではさっぱり分かりませんが、
彼がご飯や散歩以外の時に吠える時は、ほぼ必ずと言って良いほど
入院している子に異常が見つかるのです。
彼は本当に分かっていたのかどうか。
もしかしたら、ただの偶然かも知れません。
でも、彼が吠えた十数回、いや、数十回、
ほぼ全てが入院動物の危機だったのです。
もちろん、入院動物が危機を迎えればスタッフの誰かが気がつきます。
しかし、彼は誰よりも早く教えてくれました。
そのわずかな差がとんでもない違いになることも多々あるのです。
他にも魅力はありました
彼は底抜けに明るく、落ち込んでいる獣医はみんな彼の元に遊びに行きました。
誰にでも嬉しそうに反応し、何故か悩みを吹き飛ばしてくれる・・
不思議な魅力を持っていました。
彼は人を慰める為に必要な方法も知っていたのかも知れません。
そんな素敵な彼ですが、別れは突然やってきました。
吠えませんでした
彼は吠えませんでした。
そう、自分が最期を迎えた時のことです。
今朝までは、いつものように「ワホホホーン!!」と食事を催促していた彼。
どうして・・・突然の出来事に、病院スタッフ全員が途方に暮れます。
彼は解剖されました。
病院の犬で、不可解な死で、勉強の為。
可哀相ですが、彼の死因を知る事は全員の望みでもありました。
でも、はっきりとした原因は分かりません。
今思えば甲状腺機能低下だったのか、それとも脳の疾患だったのか・・
獣医は理解しているんです・・が
ビーグルなどの犬種では、死ぬ直前まで食欲・元気があるなんて事は
よくある事、それは獣医であれば皆分かっている事です。
それは分かっているのです。
でも、そんな獣医にも、この別れは大変応えました。
5年前に病院の前に捨てられた老犬は、
それだけ大切な存在になっていたのです。
看護師は泣きじゃくり、獣医はただうつむき、
彼は手厚くペット霊園で供養され、眠りにつきました。
思えば与えてくれるばかりだった
他の動物の為に吠え、人間を慰め、
自分の最後には全く心配をかけない。
処方食のサンプル、散歩の為のわずかな時間だけでは
とても返しきれない、とっても大きな、
彼を拾ってくれた人たちに対する恩返し。
きっと今は、気を使う事も無く天国でいつも通り吠えているでしょう。
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