ワクチンの普及によって激減した感染症、ジステンパー。
しかしまだ発生は少なくありません。
発症すると死亡率90%以上の恐ろしい病気です。
一体どんな恐ろしさを秘めているのでしょう。
どこがやられてしまう病気?症状は?
ジステンパーウイルスが感染すると、まずリンパ球が攻撃されます。
リンパ球は「体に入ってきた異物を攻撃」「抗体を産生」などの
役割を持った血球ですので、これが働けなくなってしまうと
細菌が入りこんできても、しっかりと攻撃出来なくなります。
そうなると、細菌は簡単に感染してしまいますよね。
これにより、鼻水や目やに、肺炎に下痢など、
二次感染の症状が見られるようになります。
こういった症状からジステンパーの発見に通常はつながります。
しかし、恐いのはこれからです。
約一ヶ月ほどすると、増え続けたジステンパーウイルスは
脳や脊髄などの大きな神経に侵入してしまうのです。
つまり体を動かすのに、最も重要な神経がやられてしまいます。
そうなってしまうと、体は言う事を利かなくなり
立ったり歩いたり出来なくなったり、小刻みに痙攣。
最終的には酷くなった肺炎や神経症状が原因で死亡します。
どうやって他の犬にうつる?
感染犬の鼻水や唾液、糞、尿などです。
それを舐めたり、呼吸する事により体に入れてしまいます。
非常に感染力は強いです。
どんな治療が出来るのでしょう
他の多くのウイルス感染症同様、ジステンパーウイルス自体を
退治するような治療法はありません。
つまりは対症療法しか出来ないという事です。
まず、免疫力が落ち、二次感染が起こりやすくなっていますので
抗生物質により細菌の感染を防ぎます。
併せて落ちている免疫力自体を高めてあげる為、
インターフェロン療法などを行う事もあります。
罹ってしまったらどうしようも無い?
最初に説明がありました通り、死亡率が90%以上です。
でも100%じゃありません。
生還する子も居ますので、最後まで諦めないように!
神経症状が現れた場合は後遺症が残る事もありますが、
治ればまだまだ幸せに暮らせる可能性はあります。
回復は犬の力を信じるしかないですが、その後は飼い主さん次第ですよ~。
どうして起こる?ジステンパー
日本の混合ワクチン普及率は50%あるいはそれを切ります。
ジステンパーにかかる犬は
「そんな感染症なんてそうそう起こらないよ。」
「毎年お金を払うのはバカバカしい」
などの考えを持つ飼い主さんが原因であることが多いです。
ワクチンを打っていれば防げるのに・・・(100%では無いですが)
強くそう思ってしまう病気です。
仔犬~老犬まで、計画的にワクチンを打っていきましょう。
ジステンパーの雑学
人間に肺炎や脳炎を起こす事のある麻疹ウイルス。
18世紀にヨーロッパで2億頭の牛を殺した牛疫ウイルス。
一度鶏舎で発生すると、数万羽を死亡させるニューカッスルウイルス。
これらとジステンパーは近縁のウイルスになります。
感染は犬だけでは無く、キツネなど犬科を初めとして、
ライオン・トラなどの大型猫科動物、フェレットなどイタチ科、
海獣類にイルカなど、その範囲は大変広いです。
つまりは野生動物からの感染も有り得ない事ではありません。
1980年代には、ロシアのバイカル湖でアザラシの大量死が
ありましたが、原因としてはジステンパー感染犬の死骸を
湖に捨てた事が挙げられています。
↓記事が参考になった!楽しかった!と少しでも思ったら共有して頂けるとビーグル獣医がヒャッホウです↓
あなたにオススメの記事
同じカテゴリーの記事(新着順)
- 犬や猫の全身麻酔による歯石除去を出来る限り回避する方法
- 98%は知っている!・・それ本当? 犬の玉ねぎ中毒の原因と対処方法
- まあ、お前も飲め! 正月に急増する犬の急性アルコール中毒
- ケンネルコフ 弱っちい奴らの卑怯な感染方法
- 軟口蓋過長症 短頭種に多い病気と放送禁止の危機
- 小型犬によく見られる病気 1ページでは伝えきれない注意点
- 大型犬によく見られる病気 骨や関節の病気と熱中症
- 犬猫に多い中毒とその薬
- 犬や猫の抗がん剤その前に 癌について
- 犬や猫の目薬その前に 目の病気の話
- 応急処置 犬の緊急事態に
- 犬のジステンパー
- 犬のパルボウィルス感染症
- 犬の伝染性肝炎(アデノウィルス感染症)
- 犬の狂犬病
- 犬のチェリーアイ
- 犬のアレルギー(アトピー)性皮膚炎
- 犬のニキビダニ症(アカラス)
- 犬の疥癬(犬のヒゼンダニ症)
- 犬の外耳炎
- 犬の椎間板ヘルニア
- 犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
- 犬の糖尿病
- 犬の乳腺腫瘍
- 犬の子宮蓄膿症
- 犬の歯周病に気を付けましょう
- 犬の胃拡張・胃捻転症候群(GDV)
- 犬のフィラリア症(犬の糸状虫症)
- 犬の僧帽弁閉鎖不全症
- 犬の心不全