「何とかしてこの場所から逃げられないか」
入院やお預かりでケージに入っている犬や猫がいつも企む、獣医泣かせの一途な思い(苦笑)。
彼らの思いが叶うことは通常まず有り得ませんが、中には奇跡的な確率を潜り抜け、
動物病院から脱出を成功させる猛者が現れます。
猛者にやられてしまった動物病院がとれる行動はただ二つ・・
・土下座
・獣医師生命をかけた捜索
これ以外に選択の余地はありません^^;
当然、この行動をとろうがとるまいが、動物病院の信用はガタ落ちですし
危機であることには何ら変わりがありません。
やってしまったことですから、これは乗り越えるしか無いのでしょうが
中には危機の乗り越え方を間違えてしまう獣医が居るようです。
一体どんな獣医なのでしょうか?
犬の逸走事件の始まり
「あっ!しまった!クソ!」
入院犬の包帯を替えていた院長から発せられた、明らかにマズそうな一言(苦笑)
処置中の犬が診察台から飛び降りてしまったのです。
そして犬は、院長の閉め忘れた診察室の入り口をサッと通り抜け、
待合室に向かって猛ダッシュ!
ここまでであれば、たま~にあることですし、入院犬の包帯替えなどは基本患者さんの居ない
お昼の時間帯や夜の時間帯に行うことが多いので、まず大惨事になることはありません。
病院の入り口が閉まりっぱなしですから、外に行くことは無いですからね。
待合室で犬を何とか捕まえて、「あー、危なかったぁ」と一件落着・・するはずだったのですが、
この日はちょっと運も悪かったようです。
なんと、待合室に逃げたところで預かりの子の散歩から帰ってきた看護師さんが
「ただいま~。あっっ!!!」
ちょうど病院の入り口を開けてしまったのです。
当然、犬は憧れの外の世界へと飛び出し、永遠のお散歩へと出発します。
これはマズい。
院長に待っているのは土下座と信頼回復への辛い日々・・と決定したかのように見えましたが、
頭を抱えた院長はとんでもない手段を考えつきました。
院長「ちょっと良いかな。Aさん」
入り口の扉を開けた、看護師1年目のAさんが呼び出しを受けます。
生贄を用意する院長
院長「中の様子をよく見ないで入り口を開けたから、大変な事態になったんだよ。」
Aさん「す・・すみません・・」
自分がずいぶんとオープンな(入り口開きっぱなしの不注意な)診察をしていたことには一切触れず、
看護師さんのせいにし始めたのです。
院長「とにかく病院内から逃げたなんて言ったら大問題だから・・散歩中の事故で逃げたということにしてもらいたいんだよ。そうだな・・リードがちぎれたということにしよう。」
Aさん「・・・・」
院長「君が散歩をしていたらリードがちぎれて逃げてしまった。いいね。私は院長だから、私に何か不手際があったなんて言ったら病院自体が危ないんだよ。大丈夫。君のことは絶対に守るから。頼んだよ。」
Aさん「わ、分かりました・・」
犬の飼い主さん登場
そして、ついに飼い主さんが現れます。
飼い主「先生!!どういうことですか!!有り得ないでしょ!!」
院長「本当に申し訳無いです・・うちの看護師が散歩で逃がしてしまって・・いつも散歩の際はリードのチェックをしっかりとして二重リードでするようにと厳しく言ってあったのですが・・」
もちろん、院長の言っていることは嘘っぱちで、そんなアドバイスはしたことがありません(苦笑)
院長「私の指導と管理不足が招いた結果だと思っています・・スタッフを信頼し過ぎた私が悪いんです。今後のことも含めて、今回ミスをした看護師については厳しく対処したいと思っています。」
あれ?守るんじゃなかったでしたっけ(汗)
院長「でも、悪いのは私なんです。いくら厳しく言ってあったとはいえ、いくらスタッフに完全にミスがあったとはいえ、病院の責任は私の責任なんです。」
飼い主「誰なんですか・・そのスタッフは・・」
院長「Aさん!」
Aさんがとぼとぼとやってきます。院長のあまりにもおかしな言動にやや目はうつろ・・
飼い主「あなたなんですね!うちの子を返してください!」
Aさん「す・・すみません・・でした・・」
飼い主「院長にもちゃんと言われてたんでしょ!?どうしてしっかりとリードの確認をしてくれなかったんですか!」
院長「いや、私の言い方が悪かったんです。特にAさんには何度も確実にリードだけは気を付けるように言っていたのですが・・まだ1年目なのでその怖さが分からなかったのでしょう。それを理解していなかったのを見抜けなかった私に責任があるのです。」
飼い主「いや!院長が悪いんじゃないです!Aさんっていうのね!1年目だろうが何だろうがあなただっていい歳でしょ!どうして院長が言った当たり前のことすらしなかったんですか!」
Aさん「・・・すみません・・」
飼い主「すみませんじゃないわよ!動物病院が悪いんじゃなくてこの人がおかしいんじゃない!」
院長「いや、うちの動物病院が悪いんです。獣医師生命をかけてでも、あらゆる手を模索して○○ちゃんを必ず見つけられるように全力を注ぎます。それがこのようなスタッフを雇ってしまった私に取れる唯一の償いだと思いますので・・」
飼い主「院長も大変ね!雇ったのがこんなスタッフで!」
会話が終わる頃には100%看護師Aさんが悪いことになってしまっていました(汗)
恐るべし院長の保身能力・・
Aさんが生贄になったおかげで、動物病院自体の悪い噂は全く流れませんでした。
しかし・・
犬の逸走事件 その後
当然、Aさんに関する悪い噂は広まり・・
「あの動物病院のスタッフのAという人は危ない」
「院長が苦労しているらしい」
「せっかく良い院長なのに、スタッフに恵まれなくて勿体ない」
Aさんは仕事中にもボーっとしてしまうことが多くなり、この事件から一層Aさんに
厳しく当たる事が多くなった院長から罵倒され続ける日々を送りました。
この姿がたびたび目撃されるも
「院長がまた苦労している。あのAさんは本当にダメなのね」
となり、結果として院長に都合の良い方向にばかり、事は運びます。
ついにAさんは病院を辞めてしまいました。
いや、正確には動物看護師の道を諦めることになってしまったのです。
夢を持ってこの道に進んだでしょうに、可哀想ですね。
なお、その動物病院は今も地域の方々に信頼され順調に経営されています。
あとがき
逸走事件に限った事ではありません。
自分の身が危うくなるとスタッフや業者のせいにする獣医は意外と多いものです。
動物病院を軌道に乗せるまではとんでもない苦労がありますから、
気持ちが分からない訳でも無いですが、人としてやっちゃいけないことですよね^^;
話術だけで食っているような悪徳獣医も居るんですから、
1年目の動物看護師が勝てる訳がありません。
真実を見抜けるかどうかは、飼い主である皆さんにかかっているのです。
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