犬や猫の血管拡張薬

 

さあ、強心薬のお話はしました!
では次は強心薬の作用をサポートする血管拡張薬についてです。

 

 心臓にかかる負担と血圧


ビーチボールなどの口が細いものに空気を吹き込むのと、
ビニール袋に息を吹き込むの・・どっちが楽に空気を入れられますか?
ビニール袋ですよね。

心臓と血管の関係も同じなんです。
細い血管に血液を押し出すのと
太い血管では太い方が楽々押し出せる
んですね。
これが強心薬と血管拡張薬の関係です。

血管拡張薬を同時に与えることによって、強心薬が少なくて済む
そして何よりも心臓が長持ちしてくれるんです。

 

 血圧の調節はどうやって?


血圧がどこでどうやって調節されているか。
二つの血圧調節についてお話しましょう。

 

 ノルアドレナリン


まずはアドレナリン。
よくイライラしている人に「血管プッツンするよ~」なんて
冗談がありますが、これが元となります。

血管の太さは「血管平滑筋」という筋肉で調節されるのですが、
アドレナリンはこの筋肉を収縮させる作用があります。
つまり血管がギュッと細くしまってしまうんです。

体にある血液の量は変わりませんから、
血管が収縮すれば血圧は上がります。
だからプッツンするよって言うんですね。

血管が細くなってしまうと、もちろん心臓は
より強い力で押し出さなければいけませんね。

 

 レニン-アンギオテンシン系


難しそうな名前ですよね。
簡単に言うと、腎臓を通っている血管に
血圧の計測器がくっついてる
んです。

それで「血圧が低い」と読み取ると最終的に
血圧を上げる
ような酵素をだすんですね。

この調節は血圧が上がるまでの道のりが長いですので、
比較的ゆっくりとした血圧調節となります。

 

 血管拡張薬


交感神経系α遮断薬
・プラゾシン
・ブナゾシン etc・・

血圧調節で挙げた、ノルアドレナリンが血管を
収縮できないようにしてしまう薬です。
非常に強力に血管を拡張させます。

アンギオテンシン変換酵素阻害剤
・カプトプリル
・エナラプリル
・デモカプリル etc・・・

腎臓からの血圧調節を途中で止めてしまう薬です。
この「アンギオテンシン変換酵素」で作られるアンギオテンシンⅡは、
動脈硬化の促進、心臓の筋肉を弱らせる原因にもなるものですから、
これを作れなくするこの薬は非常に有効です。

現在小型犬の僧帽弁閉鎖不全に最もよく使われている薬です。
病気の初期の段階から使うことが多いです。

血管平滑筋に直接作用する薬
・ベラパミル
・ジルチアゼム
・ニフェジピン

もう腎臓やアドレナリンに関係なく
血管を直接拡張してしまおう!という薬
です。
血管の筋肉が収縮しにくいようにします。
さらに、心臓に栄養を送る血管を
拡張しやすいことから有効な薬
と言えます。

特にベラパミルとジルチアゼムは心臓によく効きます。

ニトロ化合物
・ニトログリセリン
・硝酸イソソルビド
・ニトロプルシド

元を辿ればダイナマイトの原料です。
研究者がダイナマイトの原料をなめてみたところ、
激しい頭痛がしたのをきっかけにこの物質が
「血管拡張作用がある」というところまで分かりました。

今では安全に使用できるように製剤化され、
血管拡張薬として使われています。

心臓に栄養を送る血管によく効くことから、
人の狭心症の治療によく使われるみたいです。
動物では重症の場合に使用することが多い薬です。

 

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