飼っていた犬が肺水腫で緊急事態。
何とか電話のつながった病院へ急ぎ、救命処置をしてもらいましたが時は既に遅し。
その子は息を引き取りました。
優しく飼い主さんを励ます獣医・・・
これから大変な事態になるとは何も知らずに・・・
お礼状が届きました
その救急の飼い主さんからお礼状が届きました。
この度は本当にありがとうございました。 うちの子も、最後に一生懸命診てもらえて幸せだったと思います。 是非お礼がしたいのですが、食事でもご一緒して頂けませんか? |
ん?食事?
あまり経験した事の無いお礼状の内容に、獣医は戸惑います。
もちろん、そんな突然の誘いを受ける訳も無く、丁重に断りました。
しかし、その半月くらい後・・・
段々と家の中も落ち着き、以前の生活が戻ってきています。 本当にあの時、先生に診てもらえて良かったです。ところで、やはりお礼がしたくて・・・ 直接電話でお話したいのですが、連絡先を教えて頂けないでしょうか |
ん?連絡先?
個人の連絡先を飼い主さんに教える事は基本的にありません(汗)
これについても、丁重にお断りしました・・が・・
その一ヵ月後
ある新規の飼い主さん。
いつものように、診察に向かう獣医ですが、
これからの診察予定のカルテを見て驚きます。
なんとカルテには、あのお礼状の飼い主さんの名前が(汗)
どうやら新しく犬を飼い始めた模様。
普段どおりに診察をこなそうとする獣医でしたが、
その飼い主さんの目的は明らかでした。
診察中も、「先生がお好きな食べ物って・・」「一人暮らしですか?」
「休みの日とかは何をされて・・」その獣医に対する、あからさまな質問が続きます(苦笑)
しかし、そこはプロ。
そういった質問を受け流しながら、一通り診察を終え、
「次回は二回目のワクチンですので、3週間後にいらしてください」と一蹴します(笑)
その飼い主さんは、おとなしく次の診察を待つ事にしました。
待ち遠しい診察の日
犬を飼い始めてしばらくの間は、通院の機会も多いです。
その飼い主さんは、今か今かと待ち焦がれて、病院へと数週間置きに通い、
質問を浴びせかけ、アプローチを試みました^^;
しかし、相手の獣医は全くなびく事がありません。
そんな中、ついにその時がやってきます。
「では、次回は1年後のワクチンになります。何も無いと良いですね」
なんと次回が1年後・・・
飼い主さんはガックリと肩を落としました。
初めての嘘
何とか先生に会えないだろうか。
その飼い主さんは考えます。
「そうだ・・調子が悪い事にして病院に行こう。」
全く元気に過ごしていた犬でしたが、その飼い主さんは
いそいそとその子を病院に連れて行き・・・
「昨日の夜、吐いて吐いて仕方が無かったんですが・・」
嘘を付き、診察を受けました。
もちろん、明らかに嘘だって事はバレています。
獣医「今は落ち着いているみたいですから、また家で経過観察してください。」
飼主「じ、次回はいつ来ればよろしいでしょうか・・・?」
獣医「今度は調子の悪い時に連れてきてくださいね・・」
本音がポロッと出てしまいました(汗)
冷や汗ダラダラの飼い主さん。
でしたが、彼女はまだまだ諦めませんでした。
「本当の病気じゃ無いと無理だわ・・」
何も見えなくなってしまいました
なんと、その飼い主さんは病気を作ろうと試みます。
インターネットで「皮膚病は診断が難しい。脱毛が起こった場合・・」
そんな解説を見て、皮膚病だったら長く通えるかも知れない!と
意図的にその子の前足の毛を抜き始めました。
「きっと原因不明の脱毛って事になるから、長く通える・・ふふ・・」
そしていざ診察の日・・・
さすがにその獣医もそこまでバカではありません。
意図的に抜いた脱毛と抜けてしまった脱毛、その違いくらい分かります(汗)
獣医「いつごろから毛が抜け始めましたか?・・昨日じゃないですか?」
飼主「い、いや・・一週間くらい前から徐・・徐々に・・です」
獣医「もうやめましょう。これではこの子が可哀想です。」
もう踏んだり蹴ったりの結果となりました。
自業自得です。
更に見えなくなっていました
病院に行きたくても病気になってくれない。
自分で嘘の病気を作ればたちまちバレてしまう。
その飼い主さんは途方に暮れました。
そんな中、またもや彼女を行動に移したのは
インターネットの記事でした。
「公園で有機リン系の農薬が撒かれ、散歩中の犬数頭が・・」
何をどう考えたのか、その飼い主は自宅にあった殺虫剤を
缶詰のフードに混ぜて食べさせてしまいました。
やってはいけない事でした。
その子はその数分後、泡を吐き激しい嘔吐を繰り返します。
そして病院へ
「公園を散歩していたら、この子が何かを口にして・・」
獣医は迅速に大量の水を無理やり飲ませ、胃に残った薬物を吐かせ、
強肝剤に点滴に・・出来る限りの処置をします。
そして、その子は一命を取り留めました。
獣医「・・・公園で・・・なんですよね・・・」
飼主「・・・・・・・」
やっと自分のやった事の重大さに気付いたのか、
明らかに挙動不審な飼い主さん。
もちろん、獣医は気付いていました。
その後、獣医の決意
その後、まもなくその獣医は病院を去りました。
自分が居続けたら、いつかその子は殺されてしまうかも知れない。
自分のせいで、飼い主が人間として犯してはいけない事をした。
そう思ったのかも知れません。
こうして、彼女の危険な恋は終わりを迎えました。
獣医の取った選択は正解だったのでしょうか。
彼女はその後、正気を取り戻してくれたでしょうか。
その子に与えた苦しみは償える物ではありませんが、
しっかりと考え直して、幸せに暮らせてくれたら・・と願います。
【追記】
これは昔のお話です。
現在でしたら、虐待に対する法整備も進んでいますので
警察に届けるという選択肢が出てきたかも知れませんね。
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