獣医になるまでに受けた授業の中でも一番辛かった授業、
それは「外科実習」でした。
ただ勉強が大変!とか遅い時間まで続く!
というような実習は他にいくらでもあります。
では、なんで「外科実習」なのでしょうか。
「外科」これは簡単に言えば検査と手術の勉強です。
そのうち手術の勉強はどうやってやっていたかと言うと・・・
ビーグル犬を使って行っていました。
学校で飼われている、大量のビーグル犬で手術の練習をする授業なのです。
健康なビーグル犬のお腹を自分で切って、更に腸も切って、それを縫合する練習をするのです。
ビーグルがきっかけで獣医になりたいと思った私にとって、
健康なビーグルをわざわざ傷つけて、いや、結果殺すような
授業はとても耐えられるものではありませんでした。
実際、この授業では精神的に限界で、手を出すことが出来ませんでした。
端っこでなるべく見ないようにしてしまっていたと思います。
「やる気ないの?犬の命をもらって授業してるんだからもっと真剣にやれよ!」
なんて友人に言われたと思います。
でも、この授業、本当にそのビーグル犬の命の価値と同じだけの価値があったのか・・
私はそんな価値はないと思っています。
それまでに、プロの手術を見たことが無いような学生ばかりの授業。
つまり、見本がよく分かってない状態での手術なのです。
先生よりも圧倒的に生徒が多いこともあり、先生もサポートしきれていません。
結果、ビーグル犬は下手くそな手術でぼろぼろになり、
ある犬は傷口が開いてベロンベロンの状態になっていたり、
ある犬はずっと鳴き続けたままだったり・・・
胸を開く実習では、肺を傷つけてしまって
死んでしまった例もあったようです。
そしてこういった実習に使われた犬はどうなるか。
更に実験に使われるか、安楽死させられるのです。
使うだけ使って、ボロボロにさせられて、用が無くなったら殺す。
実験に使われる場合、更に脳を取り出されたり、
中毒を起こすような薬剤を使ってデータを取ったり・・
実習の後、しばらく班の担当のビーグル犬を世話するのですが、これがまた苦痛。
この後を考えると愛情をかけるのが怖くなってしまう、そんな相手のお世話です。
ずっとケージに入れられっぱなしだったからでしょうか。
初めて見る「花」を不思議そうにいじったり、鳥に驚いたり、
可愛らしい仕草を見て泣いてしまったのを覚えています。
ケージの金網の上にずっと居たせいか、足は金網に
めり込んだような、変な形になっていました。
私の後輩には、自分で一生面倒見るから担当のビーグルをください!
と言った学生もいました。
大学はこういったことを一切認めていません。
「その後遺症を持った犬を生かすことは犬の為によくない」だそうです。
これが私が一番辛かった実習のお話です。
追記
現在ではこのような実習は無くなり、「代替法」が用いられています。
スポンジのような道具を使って縫合などの練習をする形式ですね。
出来れば私もその方法で実習を受けたかったな・・・
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