「傷には消毒」
この一般常識とも言われている行為ですが、ビーグル獣医は犬や猫の診察で消毒薬を使う事がほとんどありません。
そうそう、知ってます(苦笑)。そんな顔する人がほとんどですよねぇ。
もしかすると飼い主さんから見ると「ええ・・この獣医大丈夫かしら・・」なんて思われてしまうかも知れませんが、では逆に聞きましょう^^;
なぜ、皆さんは消毒をするのですか?
おそらく消毒をする理由としては・・
・傷が化膿してしまうから
・注射を刺すのに不衛生だから
・昔からそう決まっているから
といった理由が上がると思いますが(苦笑)、これらの理由であれば消毒薬は使う必要がありません。
ですから分かりましたって!(苦笑)
ひとつずつ解説してみますから、とりあえずその顔やめて~^^;
今回は「傷が化膿してしまうから」の間違いを解説いたしましょう。
傷の治し方 森に例えて考えてみましょ
相変わらず例えが下手なビーグル獣医ですが、傷の治し方を森に例えてみましょうか^^;
森の一部分がごっそりとえぐれてしまったとしましょう。
最終的に元通り木や草が生い茂れば傷は完治。
まあ、放っておいても時間があれば勝手に治るでしょう~。
・・と思いきや、なんと生えたての草木が大好物の害虫や土にトンネルを掘るのが趣味の害虫たちがたまたまこの場所を見つけてしまいました。
どうしてこんなタイミングで・・これでは森が元の姿に戻れませんねぇ。
最悪、穴まみれになってしまっては木が根を張る事自体が不可能になってしまうかも知れません。
今回に限っては、我々が考えなければいけないのは「森を元通りにすること」のみですので、可哀相ですがこの困った害虫たちを駆除しなければならないですね。
でも、元々居る無害な昆虫と困った害虫は外見だけでは違いが分からないようです。
そうなると方法はどうやら二つ。
1.大勢の人間で無差別にえぐれた部分の昆虫という昆虫を捕獲して森の外に追い出す
2.空から(効き目が数十分で切れる)駆虫薬を撒いてえぐれた部分の昆虫を全滅させる
あらら・・両方ともなかなか荒っぽい方法ですが、見分けがつかない以上仕方がありません(汗)
でも、二つの方法には大きな違いがありますねぇ。
駆虫薬を撒いた場合、これは農薬みたいなものなので、せっかく生えかけてきた草木や、周りの元気な草木にまで悪影響を与えてしまうでしょう。
しかもトンネルの中に隠れてしまっていては駆虫薬から逃れてしまうかも知れませんから、トンネルに居る昆虫は全部追い出してから作業に入らなければなりませんね。
やはり人間が手をかける必要がありそうです。二度手間ですね~。
結局追い出すのであれば、捕獲して森の外に出しちゃえば良いと思いますから、結局二つの方法でそんなに結果の違いは出なさそうです。
それなら1つ目の方法で行きたいと思うのですが、いかがでしょう^^;
何を意味している?登場物解説
・森⇒皮膚
・えぐれた部分⇒傷
・困った害虫たち⇒病原菌
・元々住んでいた昆虫たち⇒基本悪さをしない元々皮膚に居る菌(=常在菌)
・人間で捕獲して外へ追い出す方法⇒水による洗浄
・駆虫薬⇒消毒薬
つまり何が言いたいのかと言いますと、普通の傷を水で洗うと常在菌と病原菌を洗い流せて細胞を傷つけない。
対して、消毒薬を使うと元々皮膚に居る無害な菌(=常在菌)と病原菌を殺すけれども細胞も傷つける、ということなんです。
しかも水道水でしっかりと洗い流したあとに消毒しないと、異物が邪魔をして効力が落ちちゃいます。
つまり水道水でしっかり洗う作業からは逃れられません。
水道水でしっかり洗えていれば病原菌も常在菌も居ませんから・・あれ? 消毒することに何か意味ありますかねぇ(苦笑)菌の居ないところに、自分の細胞を傷つけてまで何をしてるんでしょう^^;
また、水が残っているのに消毒薬を使っても薄まって効力が落ちちゃいます。乾かさないといけませんかねぇ。
そうだとすると、乾かすことで他の弊害も出てきますね~。
⇒白色ワセリン、こう使え!(傷口を乾かす問題点について書いています)
きれいにしても数十分だけ
また、皮膚に居る常在菌が傷口以外の皮膚からやって来ますので、傷口の常在菌は数十分で元通りになります。
一日一回の消毒なんてやっても、残りの23時間数十分は無菌じゃ無いんですよ~。
ずっと無菌にしたければ、24時間ぶっ通しで消毒すれば良いかもしれませんが、草木も当然生えません。
つまり、傷はいつまで経っても治りません。
困った害虫(病原菌)以外の昆虫(常在菌)はそんなに気にしなくて良いんです^^;
困った害虫がたまたまこの場所を見つけて入ってきてしまうと困るので、元々居た昆虫たちには迷惑な話ですが、時々まとめて森の外へ出てもらう必要があるだけなのです。
むしろ、元々居た昆虫が元気に暮らしていたら後から来た困った害虫は繁栄しにくいですから、そう簡単にははびこれないんですよ。
何の昆虫も居ないような状況ではあっという間にはびこっちゃいますけどね~。
つまり、常在菌が全く居ない場所の方が、病原菌がはびこりやすいんです。
消毒や洗浄をやり過ぎる方が、実は病原菌の問題は起こりやすいと言えますね。
問題無い常在菌でも異物には注意!
もう一つ覚えておいて頂きたいのは異物の存在。
傷口には壊死した皮膚や汚れなどの異物が時間に応じて増えてしまいます。
怪我した傷の周りには、皮膚が黒ずんでいたり、ベタベタしているせいで汚れが付きやすいですよね。
異物がある場所に一定数の菌が居ると、常在菌だろうと感染が成立してしまいます。
黒ずんだ皮膚や汚れは取り除かなければなりません。
そう、水で^^
この作業をしっかりしておかないと異物+菌で感染が起こってしまいます。
なお、常在菌が居ても異物が無ければ感染しません。
そうなると最初に説明した「菌を全部取り除く」作業自体に意味があるかどうかも疑問になりますね~。
一番重要なのは異物を取り除くことで間違いないです。
異物を取り除けていれば感染は起こりませんし、異物が取り除けていなければ異物が消毒薬の効果を落としてしまいますから、消毒薬を撒いても意味が無く感染が成立します(苦笑)
どちらにしても消毒薬は不必要。
意味合いは異物の除去中心でしょうが、水でしっかり洗うことは必要。
(結果、菌もリセットされますがそのリセットは必要?)
異物が完全除去されて汚れもつかないような状況であれば、毎日水で洗う必要すら全くありません。
異物が無いんですから、感染しませんものね^^
「でも1日1回は絆創膏とか交換した方が良いのかな?」
ビーグル獣医愛用のキズパワーパッドの説明にも「浸出液が漏れるようであれば交換が必要」とは書いてありますが、「毎日交換が必要」なんてどこにも書いてないですよ~。
⇒キズパワーパッド注意点(外部サイト)
怪我をしても、ビーグル獣医は2~3日キズパワーパッドを交換しません。
そもそも、傷や細菌には「1日24時間」なんて常識は関係無いのです。
人間が勝手に利用している時間単位ですからね。
消毒薬を使用する例外
例えば犬に咬まれたり、釘が刺さったりして破傷風など危険な菌が入り込んでしまった可能性がある場合^^;
このような場合にはしっかりと傷を切開して消毒薬で殲滅する必要があると思います。
異物が奥の方に入り込んでいて取れなかったら感染しちゃいますしね~。
切開して水道水でも十分に洗い流せると思いますが、100%に100%を重ねて、とりあえず細胞が傷つこうが最悪の菌だけは確実に殺しときましょうか^^;
一度消毒してしまえば、もう破傷風菌は居ませんので消毒の意味はありません。
普通の傷では、そのような危険極まりない菌がついていることはまずありませんし、仮にあったとしても水で簡単に洗い流せますので、やはり細胞を傷めつけるだけの消毒なんて必要ないってことになります^^;
また、本来無菌である場所に無菌じゃ無いものを入れてしまう可能性がある場合。
手術でお腹を開ける部分の皮膚などに菌がついていると、お腹の中は元々菌が全く居ませんから常在菌だろうと病原菌だろうと大量に入り込んでしまえば立派な感染を起こしてしまいます。
この場合は一度開く部分を無菌にして、出来るだけお腹に入ってしまう菌を減らすことは望ましいでしょうね~。
でも、術後にお腹を閉じてしまえば、消毒は全く必要ありません。
きっとこんなお話をしても「やっぱり心配だから念のため・・」という方々がほとんどだと思いますけどね(苦笑)
無意味な消毒が根絶されて、無駄に犬や猫が痛みで苦しまないような日が来ることを切に願っております^^;
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