「処方食を食べてれば病気になりにくいのよ!」
「あれだけ高いんだから、絶対体に良いんだって!」
そんな飼い主さんたちの声も耳にする今日この頃。
でもどこでどうやって「処方食は完璧!」のような情報を・・・?
いやあ、凄い情報網ですねぇ。
でも実はその情報、間違っているかも知れませんよ^^;
処方食とは?
「食事療法食」とも呼ばれます。
色々な病状に合わせて、その病状を軽減するような食事を
与える事が本来の処方食の目的になります。
つまり、結石が出来やすければ、結石の材料になるようなミネラルを
少なくしたような食事を与え、肥満の子であれば食物繊維中心の
食事でダイエットを・・といった食事療法。
それを行うためのものが処方食ってことなんですね~。
じゃあウチの猫には・・・
「この前飼っていた猫も結石で大変だったし・・・また結石が出来たら
嫌だから、この子には最初から処方食をあげておけば大丈夫ね!」
「太らせたくないし、最初からダイエット食をあげておけば大丈夫かしら・・」
そう思ってしまうのは分かります。
では、例えば有名なpHコントロールという処方食について見てみましょう。
例:pHコントロールの特徴
・結石の材料になるミネラル(マグネシウムなど)を制限
・結石が作られにくくする為、たんぱく質の量を制限
・尿の量を増加させ、結石の生成、細菌の繁殖を防ぐ
・結石の出来にくい弱酸性尿に
これだけを見ると、「なんだぁ!本当に体に良い事ばかりね!」と
なってしまいますが、もう少し裏をかいてみましょう。
「結石が作られにくくする為、たんぱく質の量を制限」
さて、皆さん、私たちの食べている食事を思い出してみると・・・
私たちって何食べてるんだっけ?
私たちのエネルギー源は、主に糖・たんぱく質・脂質ですよね。
必要カロリーをこれらの成分から摂らなければ生きていけません。
で、「結石が作られにくくする為、たんぱく質の量を制限」。
摂取カロリーは糖分と脂質に委ねられた訳です。
原材料をみていきますと・・・
米、コーンフラワー、家禽肉、動物性油脂、コーングルテン、家禽レバー、
ビートパルプ、卵パウダー、ビール酵母、サンフラワーオイル、魚油、
フラクトオリゴ糖、DL-メチオニン、L-リジン、タウリン、L-トリプトファン、
マリーゴールドエキス(ルテイン源)、各種ビタミン・ミネラル
そう、動物性油脂がずいぶんと上に表示されています。
(一般的に表示が上位であるほどその成分が多く含まれている事になります)
つまり、たんぱく質を少なくした分を脂肪で補う訳です。
もう皆さん想像がつきますね^^;
おいしいです。太ります。
pHコントロールは処方食の中でも比較的おいしい部類に入ります。
脂肪が多いものってどうしてあんなに美味しいんでしょうね(笑)
ビーグル獣医は茶色い食べ物がとても大好きですから、
おそらく猫であればpHコントロールが大好物でしょう^^;
そして、当たり前ですが太りやすいのですから、
結石が出来るような状況でなければ、普通の食事の方が体に良い
のは皆さんお分かり頂けると思います(汗)
他にも・・・・
食物繊維中心のダイエット食は体によさそうですが、摂りすぎると逆に
下痢などの症状を引き起こしてしまいます。
心不全の処方食は、体重減少、食欲不振を改善しようとしてますので
高栄養で高嗜好性、大変太りやすいです。
消化器に良い食事は、腸の吸収力が弱くなっているのを見越して、
少ししか吸収されなくても栄養が摂れるようになっています。
つまり、これも元気な子が食べたら太りやすいですよね(苦笑)
まとめ
「処方食は断じて完全食ではありません」と私は病院でよく言いますが、
皆さんもよくお分かり頂けたのではないでしょうか^^
動物病院の中には、飼い主さんからの要望があれば、
どんな処方食でも出してしまうような病院もあります。
気をつけないと、高いお金を払ってペットを太らせたり下痢にしたり・・
何とももったいない事態になってしまうのです(笑)
処方食は必要な時に、必要なものを、獣医師を相談した上で
使っていくようにしましょうね~。
↓記事が参考になった!楽しかった!と少しでも思ったら共有して頂けるとビーグル獣医がヒャッホウです↓
あなたにオススメの記事
同じカテゴリーの記事(新着順)
- 【多頭飼いor犬友達の多い方限定】フロントライン代をとんでもなく削る裏技【自己責任】
- ドッグフードランキングの大嘘! 偽情報に騙されないで~
- 狂犬病の集合注射(集団接種)で並びたくない人のための小技
- 食前?食後?食間? オエーしない犬や猫の服薬タイミング
- 狂犬病予防接種で動物病院の混雑を避ける方法
- 犬猫に消毒薬は基本使いません。注射前の無意味なアルコール儀式
- 犬猫に消毒薬は基本使いません。ビーグル獣医が傷を消毒をしない訳とは?
- 絶対に知っておいてもらいたい地域猫と地域猫団体の基本
- 無麻酔で犬や猫の歯石除去のデメリットとデメリットとデメリット
- 果たして猫に避妊手術をすると獣医は儲かるのか
- 果たして犬に避妊手術をすると獣医は儲かるのか
- 保健所側から見る犬の苦情 犬の鳴き声編
- ゴー☆ジャスに考える犬や猫のワクチン 宇宙海賊の不意討ち
- 【危険】カオスなイギリス製ペットフード祭り 購入はよく考えて!
- 98%は知っている!・・それ本当? 犬の玉ねぎ中毒の原因と対処方法
- ドッグフードの始まり 犬大好き!リバプールの敷き瓦
- まあ、お前も飲め! 正月に急増する犬の急性アルコール中毒
- あっ!猫が逃げた! 飼い主さんがとにかく最初にとるべき行動
- あのペットフードの名前の由来って? キャットフード編
- あのペットフードの名前の由来って? ドッグフード編
- 今回だけ注射打たなくても良い? 狂犬病予防接種と猶予の話
- 薬を上手に飲ませ隊(2軍) 錠剤なんて潰しちゃえ!?
- あっ!犬が逃げた! 飼い主さんがとにかく最初にとるべき行動
- いいえ、これは検査入院です! 違法?保管業未取得の動物病院
- 野良猫だから安くして! 格安?避妊手術料金の真相
- その犬や猫生まれて何日目? 悪いペットショップが分かる簡単な方法
- ジャーキー祭りへようこそ! 犬用ジャーキーそれ安全?
- 狙え!犬猫タレントデビュー! ペットに厳しい芸能界
- 忠犬ハチ公の真実 果たして焼き鳥だったのか
- +獣医のペット病院ウラ話!?存続危機 巨大フード業者と巨大動物病院
- 男はAHT(動物看護士)になれない? 給料の高いハードル
- ああ!素晴らしき大腸菌! たくさん薬を作ってくれる装置
- 動物病院のナイチンゲール AHT(動物看護士)に資格は要るの?編
- クローン用に細胞とっておく? 愛犬は戻ってくるのか
- 動物病院への献上品 ~糞便検査用のウンチについて
- 動物病院への献上品 ~尿検査用のオシッコについて
- おかあさんといっしょ ポロリと初乳と移行抗体
- 2週間効く抗生物質注射? コンベニア注を知ってますか?
- ジェネリック医薬品 動物病院特有?薬代の罠とは
- え?血が合わないから輸血できない? 犬の輸血とクロスマッチ試験
- この子はうちの子よ! 突然犬を手放すことになった訳とは・・・
- 動物病院を安く利用する裏技 ビーグル獣医がこっそり教える節約術
- 猫に引っ掻かれ犬に咬まれ・・・ 傷の正しい治し方
- 処方食は体に良いのよ? 犬や猫の処方食によくある勘違い
- 病院・病気ってなんだ? 言葉の定義を考える
- ああ・・・勘違い ペットフード&処方食の間違った使い方
- 肥満遺伝子のせいじゃない? 太りやすい人間と太りやすい犬
- ウサギの数え方が「羽」である理由 発端は鎌倉時代の肉マニア
- 先祖代々シャンプー嫌い 猫が濡れることを嫌う理由とは
- 九官鳥はどうやって喋っているの? 早く出て欲しい鳴管構造の器具